『悲しい夜』
数日前の朝、起き抜けに携帯電話に訃報の知らせが届いた。
もう数十年もお付き合い頂いている酒屋さんのスタッフが亡くなったとのこと。
齢も六十を過ぎると仕方が無いが、此処のところ立て続けに年齢の近い知り合いが亡くなっていたので、結構打ちのめされてしまった。
「俺より若ぇくせに勝手に死んでんじゃあねぇよっ!」
という感じである。
「どよよ〜ん」とした感じで店を開けて、お客様から一杯ご馳走になったら、止まらなくなってしまった。
こういうメンタルの時のお酒はあまり酔いを感じないせいか、結構飲んでしまって意識が遠くなりかけている頃に、お客様から「お任せで何かロングで一杯・・・」というご注文で作ったラムベースのカクテル。
昔、渋谷の「コレヒオ」でたまたまお会いした時に、葉巻をぱぁぱぁ吸いながら、ゲラゲラ笑って楽しそうにお酒を飲んでいる故人を思い出して、何も考えないでサクサク作ってしまったら、美味しいのが出来た。
「ピンクダイキリ(砂糖の代わりにグレナデンシロップを使う)をソーダでアップして、ダークラムをフロートしたもの。
不思議にお酒の強さをあまり感じず、葉巻の後半でも行けそうな感じである。
お客様からも好評で、自分で飲んでも美味しくて、嬉しくて、悲しさも倍増した。
同じものを何杯か続けて飲んで、私の中でのお通夜となった。
『Lonesome Nite(悲しい夜)』という名前にしよう。
作る度に、葉巻を咥(くわ)えてゲラゲラ笑ってお酒を飲んでいる故人を思い出すことであろう。