『Port Flip』
先日、30代中ぐらいの若もん(私から見たら若い)に御来店頂いた。
数年前に当方で「五月雨の夜」と「ポートフリップ」を飲んで美味しかったから、また来てくれたとのこと。
有り難いことである。
「五月雨の夜」は響17年と和三盆のシロップで作る和製ラスティーネイル。
昔「祇園サンボア」の坪庭を眺めていて閃いたカクテル。
何故か、男性客に人気がある。
写真の「ポートフリップ」はポートワイン、卵、シュガーシロップで作るカクテル。
私は全卵でわ無く黄身だけ使用。
年に何度か、「疲れた〜・・・・。」と言って死にそうになっているお客様に出すと喜ばれる。
滋養強壮系(?)カクテルである。
私は美味しいカクテルだと思う。
若もんは、この二杯とジン・トニックを飲んで、いい感じでお帰りになられた。
有り難いもんだな・・・と改めて思う。
昨夜、もう随分長く通って来てくださっているお客様が遊びにいらしてくださった。
今は東京の東側に引っ越されたので、以前ほど頻繁では無いがやはりわざわざいらしてくださる。
有り難いことである。
吸われている長いシガーの後半になると、決まって『ススキノ(Barbary Coast)』を注文される。
ジン、スコッチウイスキー、カカオ、生クリームで作るショートカクテル。
このカクテルの肝はズバリ、ジンとウイスキーの組み合わせに尽きる。
「ポートフリップ」を作っているときに思ったことで、昨日も「ススキノ」を作っている時にも思ったのであるが、オーダーをお伺いしてお客様の好みも出来るだけ良く訊いて、そこまではサービスの時間である。
そこから先のカクテルを作っている時間というのは、完全に自分一人と向き合っていて、そこは孤独の空間である・・・。
そんなことを今まで、思ったことも無かった。
なんなのでしょうねぇ・・・・。
「ススキノ」を飲んで、お客様がボソッと呟いた。
「このカクテル『トーキョー』ですね・・・。」
私が初めて「Barbary Coast」を作って味見した時に、札幌のススキノの『すすきの0(ぜろ)番地』あたりの雪景色がパァ〜っと拡がったので以降「ススキノ」と呼んでいた。
北関東出身のお客様が北海道出身の私の吉祥寺にある店で、ここでしか飲まない「ススキノ」を飲んだ時に、二人の唯一の共通点である今『トーキョー』に居る・・・ということを物凄く強く感じた一瞬であったのだそうだ・・・。
なんだか、難しいハナシになってしまった。
久しぶりに作った『Port Flip』から始まった、一席でございました。
お後はいらっしゃらない様なので、この辺で・・・。